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ドリームツリーインタビュー 「念じれば夢は叶う?」

東京大学薬学部教授、脳研究者の池谷裕二先生に、ドリームツリーを見ていただき、夢についてコメントをいただきました。

自分の夢について具体的にイメージがわくおもしろいツールですね。
夢を描き、その実現のために必要な行動を考える。人は、様々な場面において、ある戦略や目標を達成するために計画を立て実行することが必ず必要になってきます。「計画のトレーニング」ができるツールでもありますね。脳科学的には「手続き記憶」(身体で覚えた実体験は、脳の中に記憶される)のトレーニングとも言えるでしょう。

また、みんなで一緒に描くことによって、シナジー効果も生まれます。
場の雰囲気で、夢を考えたこともなかった人、夢がない、と思っていた人も自身の「ありたい姿」を見つける人も出てくるでしょう。

しかし、注意しなければならないこともあります。夢は描くためにあるものではないということです。最初は外発的な動機づけから始まるものでもかまわないですが、強制するものではありません。夢がない人、夢を語りたくない人もいるので、そんな人も認めてあげることが大切です。そうしないと、夢がない人に劣等感をうえつけることになってしまうからです。
研究者も、具体的な研究成果をイメージできているとは限りません。明確にわかっていないことが重要であって、見つかっていない新たな発見、何が起こるかわからないことへの日々のチャレンジが研究だからです。ゴールを決めて、たどり着いたところで走るのを辞めてしまうと、その先に待っているもっとすばらしい発見に二度と出会えないかもしれません。
夢のとらえ方は、みんな違っていいのです。

ところで、夢のパワーは、こんなふうに表れることもあるのです。
「女優になりたい」と心から思い、発声や演劇のトレーニングを毎日欠かさず行っている彼女。練習を続けることはもちろんですが、朝起きてから夜寝るまで、考えることは女優になることだけ。寝る前には、必ずその日の日誌をつけ、最後に必ず「私は必ず女優になる」と書きました。そんな彼女は、表情、歩き方、言葉遣いがだんだん女優さんのように変化したのです。そして、ある日、町を歩いていたとき、ふと有名プロダクションの女優募集のポスターを見つけます。彼女は早速応募し、みごとオーディションに合格したのです。

これは「観念運動」という現象です。
自分がそうなるとイメージするだけで、無意識のうちに目標に向かって身体が動き出すのです。「女優さんのような立居振る舞い」「誰もが見落としてしまいそうなポスターに気づく」これも、思い描く行為が身体の動きと直接に連動するからこその、なせる業です。

「念じれば夢はかなう」
これはあながちウソとは言えないでしょう。
「自分自身のありたい姿」を具体的かつ強く念じること。そうすることで、身体や脳は、それに向かって準備を始めるのです。


池谷先生プロフィール


池谷裕二 (いけがや ゆうじ)
1970年 静岡県藤枝市生まれ。薬学博士。東京大学薬学部 教授。
記憶のメカニズム解明の一端として「脳の可塑性の探究」を研究テーマとし、2012年には、これまで未解明だった脳内の神経細胞同士の結合部(シナプス)形成の仕組みを突き止め、米科学誌「サイエンス」に発表。たゆまぬ研究の積み重ね、成果が国内外を問わず人々を魅了し続けている、日本が世界に誇るべき脳科学者。

2006年 日本薬理学会学術奨励賞、日本神経科学学会奨励賞受賞。
2008年 日本薬学会奨励賞、文部科学大臣表彰(若手科学者賞)受賞。
また、老若男女を問わず、これまで脳に関心のなかった一般の人に向けてわかりやすく解説し、脳の最先端の知見を社会に有意義に還元することにも尽力している。

主な著書
『海馬』(糸井重里氏との共著  朝日出版社/新潮文庫)
『進化しすぎた脳』(朝日出版社 /講談社ブルーバックス)
『ゆらぐ脳』(木村俊介氏との共著  文藝春秋)
『脳はなにかと言い訳する』(祥伝社 /新潮文庫)
『のうだま』『のうだま2』(上大岡トメ氏との共著 幻冬舎)
『単純な脳、複雑な「私」』(朝日出版社)
最新著書『脳には妙なクセがある』(扶桑社)大好評発売中

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